これだけ科学が発達しいろいろな薬が開発されているのに、、むし歯や歯周病をひき起こすばい菌をやっつけて、除菌する薬がなぜ無いのかと思ったことはありませんか?
そんなことをしたら商売として成り立たなくなる歯科医師と製薬会社が結託して薬の製造を阻止するようなことは決してありません。
特効薬を作れない理由があるのです。
少し専門的なお話になりますが、細菌による病気(感染症)は強毒菌感染症と弱毒菌感染症の二つに分類されます。
前者は法定伝染病のように、感染すると必ず発病してしまう病原性の強いばい菌がひき起こすもので、そのばい菌が普段身近にはいなくて、私たちが遭遇すると感染してしまいます。
これらは大抵その病気にかかったかどうかの検査法も確立しており、治療法や効果的な抗生剤が用意されていることが多いです。
一方、弱毒菌感染症では事情が違います。これは普段私たちの身体に住みついているばい菌(常在菌)が原因で起こります。病気を起こす力が弱いのでばい菌がいるだけでは何ともありませんが、一定の条件がそろった時に病気をひき起こします。
口の中においては、歯垢(しこう)が出来てきた時です。しかも、普段から身体に潜伏しているので、風邪やその他の病気になった時に飲む抗生剤にほとんどさらされて慣れています。
だから、抗生剤が効きにくいのです。
特効薬を作らないのでなく作れないのです。
原因となるばい菌を抗生剤などで完全に死滅させることは不可能なので、結局は歯垢ができないようにお掃除することが重要になります。
歯科医師が歯を磨く指導をするのは、このような理由があるからです。
ばい菌の少ない健康な口を保つためには、ブラッシングが重要なのです。
むし歯予防とフッ素について
むし歯の予防としてよく知られているものにフッ素があります。
特に生えたての歯のエナメル質は成熟しておらずフッ素の効果が高いとされています。
現在フッ素はほとんどの歯磨き粉に含まれており、フッ素入りでない歯磨き粉を探す方が難しい状況です。
すなわち、歯磨き粉を使用していると知らず知らずのうちにフッ素によるむし歯予防を行っていることになります。1990年代の歯磨き粉は30%から50%の製品にしかフッ素が入っていませんでした。
フッ素を使ったむし歯予防の方法にはフッ素洗口、フッ素塗布などがあり、歯科医院あるいは、保健所、学校等で行われています。
近年歯周病により歯肉が痩せ、歯の根の部分のむし歯が多くみられるようになりました。この根の部分のむし歯予防にフッ素の効果が再認識されるようになってきました。
また、フッ素はむし歯予防だけでなく、ごく初期のむし歯に対してもむし歯を抑制するという効果があります。これは再石灰化を促す効果があるためです。
しかし、穴があいたようなむし歯には効果がありません。むし歯の予防は穴があく前の段階での話ですのでお間違えなく。
最近では病院の薬の成分を市販薬に転用したスイッチOTC薬剤としてむし歯予防用フッ素洗口市販薬が薬局で販売されるようになりました。
これにより歯科医院でしか購入できなかったむし歯予防薬が購入できるようになりました。フッ素によるむし歯予防は子供だけでなく大人にも有効です。
しかし、フッ素だけに頼るむし歯予防は危険です。むし歯はいろいろな要因で起こる病気です。そのため予防にはいろいろな方法を組み合わせることが必要です。むし歯予防を確実にするために定期的に歯科医院を受診、自分に適した予防法の指導を受けることをお勧めします。